大阪万博開催まで1年を切りました。毀誉褒貶ありますが、都市経営戦略としては見事です。そもそも会場となる夢洲は地盤が不安定な埋立地であり、オリンピック誘致に失敗して以来の明らかな不良債権でした。だからこそ大阪維新の会は国ぐるみの万博誘致に挑み、その後のIR構想をちらつかせることで道路・鉄道・水等のインフラ整備を加速しつつ、不足する宿泊受入能力の拡大による経済活性化を図るという中長期シナリオを描きました。
開催テーマは、「いのち輝く未来社会のデザイン」とのことですが、正直内容なんてどうでも良いのです。万博で大阪府及び大阪市が負担する費用は1,325億円で大阪府と大阪市の年度予算合計約10兆円の約1.3%に過ぎません。国費負担は1,647億円で、約113兆円の一般財源の0.15%に過ぎません。経済効果は2兆7千億と試算されていますが、大阪府・大阪市にとってインフラ整備や民間企業投資を伴うその後の継続的効果は巨大になります。
大阪府・市にとっての経済的合理性は明らかなのに、入場券収入とか建設費が云々とか、黒字か赤字とかいう些細な議論に吉村知事が必死で応戦するのは、万博が国策であり、大阪だけが得をすることへの言い訳が必要だからです。ただ、例えば三井不動産は築地市場の再開発を発表しており、総事業費は9,000億円、それでもあの立地なら誰が考えても勝ちゲーム。なら、我が国の経済発展を大阪と東京のみが牽引する構図は望ましいのでしょうか?
個人的には、「仕方ない」と考えます。理由は、更なる人口減少が確実で都市化加速が不可避である以上、東京一極集中よりはマシだから。田中角栄元首相が唱えた「国土の均衡ある発展」を目指す時代は、とっくに終わりました。あとは東アジアのど真ん中に位置する福岡県や国内生産基盤が集約された愛知県等が、都市経営戦略で国を巻き込んだ勝負をするべきです。その他ローカル地域の活性化は、属人的な天才性に任せるしかないかもです。(T)