五感でとらえなおす阪神・淡路大震災の記憶

ブログ

 能登半島域で地震と津波が発災した元旦、たまたま当方の手元にあった本のタイトルです。編者の関西学院大学金菱清教授は、発災後30年近い阪神・淡路大震災について、視覚的な記憶や航空写真等がスケールのみを表現することで個々の生命の損失に係る見る者と被害との「非人格化」を進めている。五感を手掛かりに読み解くことで、震災の記憶を問い直してみたい、そんな想いをもったゼミ生達との共同プロジェクトで出版に至りました。

 被災者への綿密な口述筆記を基に再現される当時の記憶は鮮烈です。遺体安置所となった村野工業高校に並べられた最大679体のご遺体の強烈な「匂い」、日々小さな被災を経験している視覚障がい者達の意外なレジリエンス能力など、一般に報道されなかった生々しい現場実態や感情が伝わってきます。映像や画像に依存するメディアや、定量データを整理して全体像を把握するコンサル的アプローチの限界を突き付けられた気がしています。

 中でも発災時に神戸市消防局の救助活動で現場指揮者を勤めた方のコメントには言葉を失いました。トリアージの概念すらない時代、四方八方から「こっちも助けてほしい」という悲痛な声がする中、倒壊している家に声をかけて、返事をすれば生きているし、返事をしていなければ死んでいるとの判断をしたとのこと。「声がしない人を後回しにするのは後で心に残る」というトラウマが今も消えない中、現在も語り部活動を続けています。

 金菱教授は自らが当時の被災者であり、東日本大震災当時は東北学院大学教授を務めていた方です。無論、その体験や想いがあるからこそ持てる視点なのでしょう。ただ、今も能登や周辺地域で生活インフラを破壊され、寒さや飢えに苦しめられて希望を見出せない被災者の方々の現状を、部外者が想像で「自分事」に引き寄せる時、書籍ででも手触り感のある真実の情報に触れた経験があれば、少しはマシな対応が出来るかもと願っています。(T)

タイトルとURLをコピーしました