だいぶ涼しく過ごしやすい気候になってきました。
どこからか漂ってくるキンモクセイの香りが
秋に入ったことを感じさせます。
さて、「匂い」は他の知覚情報に比べ、
感情的な面により密接な関連があるとして着目されています。
なぜ、「匂い」が感情的な面に強く結びついているとされるのでしょうか。
それは、嗅覚が視覚や聴覚に比べ、古くから生物に備わっていた感覚器官であり、
より脳の原始的な部分に影響しやすいのだろう、という説明がなされたりします。
仮説はどうあれ、「懐かしい匂い」という表現があるように
「匂い」から昔の記憶が蘇る、という現象は、みなさんも体験があるかと思います。
(映画「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」が「匂い」を
懐かしさのファクターとして使用したのは、素晴らしい着眼点でした)
本日の日経新聞にて、以下のような記事が掲載されておりました。
”味・においデータ変換 食卓へ 明大やキリン、実用化急ぐ 食品再現や広告配信”
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO75712860T10C21A9TEB000/
(記事リンク、有料会員限定記事)
”離れた人と味やにおいを共有する技術も進み、広告配信などビジネスへの幅広い応用が期待される。”
視覚や聴覚情報と異なり、味や匂いのデジタル再現は非常に難しいとされてきました。
視覚や聴覚は電磁波という、いわばデジタル信号を処理するものですが、
味覚や嗅覚は、無数の化学物質が組み合わさった複雑な情報であるからです。
これまで、”生の情報”を用いることでしか体験できなかった味や匂いが
デジタル化され、電気信号等に置き換えて再現できる可能性が見えてきました。
今やオンラインで動画や音楽の共有はたやすくなりましたが、
いずれ、匂いや味も共有できる時代がくるかもしれません。
しかし、容易に共有されるようになった「匂い」に
感情や懐かしさといった記憶は宿るのでしょうか?
キンモクセイが咲く季節は、台風の季節でもあります。
例年香りが楽しめる頃には、台風が到来し、あっという間に散ってしまうものです。
しかしその一回性こそが、心に深く刻まれる要因なのかもしれません。
(E.I.)