養老孟司先生の教え

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 YouTubeは主に音楽や漫才に利用する私ですが、他のアプリと連動したアルゴリズムの提案力は驚くべきレベルにあり、解剖学者の養老孟司先生が出てきたため、思わず拝聴してしまいました。同氏の著書は何冊も読みましたが講話はとても新鮮で、何よりも面白く、その後連なる各種関連サイトからも一気に勉強させていただきました。各種入力と脳構造を経由した出力としての運動の意味を「語り」を通じて体言してくださります。

 先生は英国哲学者のカール・ホッパーの3世界、世界1:物理的対象・出来事の世界(生物はここに含まれる)世界2:心的対象・出来事の世界、世界3:客観的知識の世界のうち、世界3ばかりに則って進化してきた人間の在り方に警鐘を鳴らします。概念のみに依存して五感や感情を軽視して言語化・数式化された情報に依存することで無駄を省き続けた結果が都市化であり、その弊害から逃れるには非合理的な自然との接触を増やすしかない、と。

 近著では「脳化社会」というキーワードで、0/1に還元される情報化の極みであるメタバースやAIの可能性に触れつつも、結局は「細胞」を持たない限り、人間の心を獲得することは出来ないのではないかとも語られています。なぜなら脳構造は複雑すぎて、人間の「あーすればこうなる」の積み重ねで解明できないから。「神経系」をつかさどる脳の働きとは別に、人間の意識や心は「遺伝子系」の情報化にも依存しているはず、とのこと。

 不安のない人間はただのバカで、自然以外に頼るなら猫と過ごせばいい、とのコメントもおっしゃる通り。コンサル業を30年やってきた自分は物事を情報に化けさせる「脳化社会」促進ばかりを目指していたんだなぁ、もっと素直に五感が生み出すナイーブな心の動きも自分だしなぁ、との世俗的な認識も持ちました。湯川秀樹教授を挙げるまでもなく、天才的科学者が、最後に哲学的メッセージにたどり着く道程までを教えていただけた気がします。(T)

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