ロボット導入の勘所?

2019年6月5日から7日まで東京ビックサイトで開催されていた『スマートファクトリーJapan 2019』に参加してきました。生産管理システムやネットワーク対応型産業機械から災害対策まで工場のスマート化に資する技術が数多く展示されていました。

会場を練り歩いていると、ある会社の展示に目が留まりました。その会社はミシンメーカーで、看板には「ミシン製造で培ったものづくり技術とノウハウを使って金属部品の受注加工を行います!」と書かれています。私の目をくぎ付けにしたのは、ミシンにシールを貼るロボットの実演展示です。このロボットの動きが、よく言えば非常に丁寧、悪く言うとすごーくゆっくりなのです。

私は気になって近くに立っていたご担当者の方に質問してみました。「このロボットのシールを張る速度は人間に比べて速いのですか?」 ご担当者様は「いいえ、人間の方がずっと速いです」と答えました。私はさらに疑問が深まり、「人間より遅いロボットを導入して意味あるんですか?」と不躾にも聞いてしまいました。ご担当者様は丁寧に答えてくださいました。「このシール貼りの前工程がミシンの製造工程のボトルネックとなっていて、シール貼りだけ早くてもダメなんです。シール貼りを人間より遅いロボット変えても生産性は下がらないし、むしろ前工程に人を厚くできたので生産性が向上しました。」

素直に考えるとボトルネックとなっている工程にロボットを導入した方が効果的なはずですが、しかし、別の見方をすると「ボトルネックになっている工程=人間でも難しい工程」とも言えます。今のロボット技術では、人間でも難しく時間のかかる工程を大幅に短縮することは難しいのです。もし人間でも難しい作業を人間よりも早く正確に行うロボットを作ろうとしたら膨大な時間とお金がかかるのは想像に難くありません。だからこそ、このミシンメーカーは生産性への影響が少なく簡単な工程にロボットを導入し、難しい工程に人間を配置転換することで、製造プロセス全体での生産性向上を図ったのです。
ロボット導入、逆も真なり!(KS)

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