塩野七生さんのエッセイを読んでいたら、ハッとさせられるメッセージがありました。39歳でトップリーダーとなったフランスのマクロン大統領やイタリアのレンツィ首相、更にはカナダのトルドー首相に言及した上で、「若いうちは雑巾がけ、なんて言ってる時代ではもはやないのだ」と喝破なさっています。
近年も「ローマ人の物語」で大ブームを巻き起こした作家ですが、既に御年80歳を迎えており、何と私の母より年上です。なるほどマクロンやトルドーはイケメンだし、小文のタイトルは「見ているだけで美しい(ベッロ・ダ・ヴァデーレ)」でしたが、彼女が若い男性の容姿を賞賛するために書いた訳では、断じてない。(ファンお馴染みの塩野さんのキメゼリフ。)
歴史に深く接してきた方々に共通する特徴として、年齢に惑わされずに客観的に人を評価できる点が挙げられます。若さが持つ本質的な美しさを認めつつ、才能ある若い人々を高く評価されています。一方、私を含むこの国の普通のおじさんたちは、司馬遼太郎さんが描いた幕末の志士たちに憧れて敬うくせに、現実世界では若者を上から目線で若造扱いすることで世の中の進歩を止めちゃってるのかもしれません。
私自身、容姿が美しかったためしはありませんが、30代までは年上の方々ばかりに囲まれて、沢山のチャンスを与えていただきました。今となっては、「見ているだけで美しい」若者達がどんどん増えてきており、これまでとは働き方を変えねばならないと感じています。一言で言えば私は雑巾がけに徹して、社内外の若い人たちがもっと前に出て、私以上の仕事をしてもらう方が未来のためになるのです。
小さな会社のトップが口にするには生意気なセリフだし、現場での実践は難しいのですが、心掛けだけは忘れないようにします。(T)