師匠のご退任

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私がコンサルタントとしてこの業界に入ってから優に20年を超えていますが、心から師匠とお慕いしているお方は慶應義塾大学経済学部の細田衛士教授ただお一人です。

20代の頃に廃棄物処理の重要性と将来性を感じて業界に飛び込みましたが、当時国内では規制業種としての側面ばかりが強すぎて、民間企業の創意工夫の余地は小さく、コンサルタントに求められる業務内容も定型的な範囲に限定されていました。そんな中、衛生工学分野の専門家のみが幅を利かせていた業界に風穴を開けたのが、「グッズとバッズの経済学」という画期的な書籍でした。

我が国の廃棄物処理法では、その運用上「有価物か?逆有償物か?」という観点で処理フローが変わります。いわゆる再生資源はバージン原料の代替物として利活用されており、有価性自体が市場原理を踏まえて変動するため、経済学的観点でグッズとバッズの境界を跨がって変動すること、ただし有害性の管理という観点では市場原理に逆らってでも適正管理が求められること、この事実を喝破したのが本書です。

無論、本書には他にも様々なご示唆が含まれていますが、業界が変わるきっかけにもなりました。また、私にもこの業界が自らの生涯をかけて取り組むに足るとの確信を与えてくれました。以来、先生とお知り合いになる機会を賜り、公私共々大変お世話になってきております。先生からは、「業界内の腐った扉を蹴飛ばせ!」とのご指示を受けており、微力ながらその一端を担うべく日々努力しているつもりです。

その細田先生が今年度を以て慶応義塾大学をご退任なされます。無論、これからも私を含む業界関係者の方々にとっての道標として、様々なご指導を賜りますが、まずは一つの区切りとして、3月16日の最後の授業に参加いたします。慶應卒でなくても、細田ゼミ卒でなくとも、先生を信じてついていく門外の弟子は全国に多数います。その一人として、心からの敬意を込めて本書を再読させていただく所存です。(T)

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