先月の台風19号、昨年の西日本豪雨など、大規模災害が毎年発生している。
日本は立地や自然条件などから、災害が発生しやすい国ではあるが、最近は特に多発しており、災害への対策なくしては成り立たない国となっている。
私はこれまで、災害廃棄物に関する調査や計画の策定、災害廃棄物広域処理における現場管理などに携わってきたが、災害廃棄物の迅速な処理こそが、都市のレジリエンスを担保する上で最も重要な課題であると考えている。そこで、本稿では災害廃棄物の迅速な処理という視点から、「災害に強いまちづくり」の要件について考えていきたい。
災害廃棄物は一般廃棄物であるため、原則として自治体が処理を行う。そのため、自治体では平時から、ハザードマップや防災ハンドブックの作成、市民への周知を通じて、情報収集や情報共有を行っているが、発災時の情報提供をより拡充していく必要がある。
民間の気象情報サービス会社では、会員のSNS情報などを基に、独自に降水量や災害の発生を予測して地域の情報提供を行っており、会員数を増やしているそうである。
環境省でも、災害時における情報共有サービス(プラットフォーム)の提供をめざしてシステムの構築を行っているところであるが、今後は、これらの情報サービスを積極的に活用して、情報提供を行っていくことが効果的だろう。
災害が発生した場合、自治体は速やかに災害廃棄物の発生量を推計し、災害廃棄物処理実施計画を策定することとなる。この廃棄物発生量予測では、ドローンを活用した画像認識・AIによる測量システムを開発している会社があり、すでに多くの災害現場で活躍している。また、発災時には膨大な廃棄物が一度に発生するため、仮置場への搬入に何時間も待たされることが課題となっている。廃棄物発生量の正確な把握や仮置場の効率的な運営方法が確立されれば、迅速な処理が可能になるとともに、被災者の負担軽減にもつながるだろう。
一方、膨大な災害廃棄物を迅速に処理するためには、広域処理や民間の廃棄物処理業者との連携が望ましいと考えている。災害で地域の処理施設が被災した場合は広域処理に頼るほかはない。広域処理では、収集運搬の効率化が最大の課題であるが、関西地方の産業廃棄物処理業者では、海上コンテナを用いて効率的な輸送を行っている。さらに、処理現場の省人化や危険作業を担うロボットの開発が望まれているが、現状では検討段階であり、今後の開発に期待されている。
以上のように、迅速な災害廃棄物処理という視点で「災害に強いまちづくり」について整理したが、やはりベースとなるのは、自治体を中心とした各主体との連携である。これを有機的な連携とするために情報システムの構築、AIやロボットなどハード・ソフト両面における技術開発が必要であり、また、これらを運用する情報通信インフラの整備、電源確保が重要であるといえる。さらに、インフラ整備や技術開発を含めた災害廃棄物処理の担い手となる人材育成も不可欠である。
防災ビジネスの市場規模は6.4兆円(電通総研)という試算もされているが、現在は、さらに市場規模が拡大していると考えられる。「災害は忘れた頃にやってくる」は、もはや過去のものであり、「災害は備えて準備する」が、これからの「災害に強いまちづくり」の基本路線ではないだろうか。(松岡 浩史)