「交通・移動システム」の進化  MaaSに則した交通・移動手段の可能性

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近年、交通・移動システムは「MaaS(Mobility as a service)」によって大きく変わりつつある。MaaSとは、ICTを活用して交通をクラウド化し、公共交通か否か、またその運営主体にかかわらず、マイカー以外の全ての交通手段によるモビリティ(移動)を1つのサービスとしてとらえ、シームレスにつなぐ新たな「移動」の概念である。

従来であれば、一回の移動で複数の交通・移動手段を利用する場合、交通・移動手段ごとに、それぞれ検索・予約・決済が必要であるが、MaaSの実現により、1回の検索・予約・決済で完結することができ、ユーザーの利便性の向上を図ることが可能である。また、MaaSにはいくつかの段階が想定されており、「情報の統合」、「予約・決済の統合」、「サービス提供の統合」、「政策の統合」の順に高度化していくものとされている。

最終段階である「政策の統合」では、例えば、都市部における交通渋滞の解消やCO2の排出量削減による環境問題への対策など、国や地域が抱える課題を解決に導くことが目的とされている。

従来の交通・移動手段のみでも、サービスのプラットフォーム化を図り、利用データをビックデータとして蓄積・分析することで、「政策の統合」段階へ近づくだろう。しかしながら、新たな交通・移動手段を模索することで、さらなるMaaSの高度化へつながると考えられる。

交通・移動手段と聞いて、まず自動車を思い浮かべる人は少なくない。昨今、自動車離れが深刻化しているとささやかれている中で、自動車業界は「CASE」戦略を打ち立て新たな動きを見せている。CASEとはそれぞれ、C(接続化)A(自動化)S(シェアアンドサービス化)E(電動化)の頭文字を組み合わせた造語である。この中で重要な役割を果たすものは、接続化であろう。インターネットと接続することで、ビックデータを生み出し、さらなる運転の自動化やシェアアンドサービス化の向上へつながり、また最適な場所へ充電ステーションを配置することで、効率的な電力供給が行えるようになると考えられる。

しかしここで最も注目するべきは、シェアアンドサービス化にある。従来の自動車は「所有」することが基本であったが、これからは「共有」するものへと、自動車の在り方が大きく変わろうとしている。新しい自動車のあり方は、MaaSの実現に向けた交通・移動手段の一つとして、欠かせないものとなるだろう。

また、少子高齢化が進む中で、高齢者の地域内交通の確保や、観光資源となるような新たな観光モビリティの展開などを目的とした交通・移動手段が「グリーンスローモビリティ」である。グリーンスローモビリティは、時速20㎞未満のため、交通量の多い幹線道路などの走行は向いていないが、交通量の少ない道路であれば、高齢者ドライバーも比較的安全な走行が可能であり、観光客の周遊手段となり得る。

その他にも、快適で省エネ性に優れ、バリアフリーが実現可能な「LRT」や、バス専用レーンを設けることで、乗車時間が短く安全性の高いとされる「BRT」などが注目されている。

 このような新しい交通・移動手段を、官民の連携により積極的に導入することで、人々の交通・移動手段の選択肢を広げるとともに、地域が抱える様々な課題の解決と、低炭素型社会の実現につながると考えられる。このことが、地域循環共生圏の創出においても重要な役割を担うのではないだろうか。(石田 翔一)

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