2018年はキャッシュレス元年とも呼ばれ、年末にはソフトバンク社が提供する新サービスも大きな話題となった。我が国では文化的な現金主義が電子化促進の課題とも言われるが、現金取引に伴う稼働やリスク、設備投資は無用なコストに他ならず、特にBtoB領域では現金取り扱いのメリットがほぼ無い。
一方、リサイクルビジネスの現場ではいまだに現金取引が慣習的に残されており、電子決済導入の徹底がもたらし得るメリットも見出せる。既存業務フローの転換は排出事業者側との相互連携抜きに実現不可能であり、一定の新規投資が必要となる場合もあるが、その実現に伴うマクロ的な効果は十分に期待できる。
本稿では、リサイクルビジネスにおける「電子決済」普及拡大の必要性とその効果についての検証を行う。
まず、その定義でもあるキャッシュレス化自体が業務負荷削減とコンプライアンス徹底を後押ししてくれる。例えば特殊な少量物品の中間処理施設への持ち込みの際には、非効率で面倒な現金取引が発生していると聞く。また、スクラップ系の有価取引では、大量の現金が手渡しで動く実態も残されており、個人レベルでの犯罪行為の温床になっていることは否めない。無論、会社ぐるみの脱税行為等は論外だが、その疑いをもたれるリスクを避けてコンプライアンス意識を徹底することもキャッシュレス化のメリットと言える。
次に、費用を受け取るリサイクルビジネスの側は、未収金の発生を防ぎ、その徴収コストを削減することが出来る。特に小口の商店等を対象とした事業系一廃や廃プラスチック取引等では、月間数千円単位の支払いに数百円の手数料を伴う振込みで支払うことへの抵抗感がハードルとなり、未だに現金取引が主流と言われる。二次元バーコードやブロックチェーン技術等を活用したフィンテックの発展は、国内外ともにBtoC領域で先行的に普及しつつあるが、その取引手数量の安さと初期投資費用の低さは、そのまま静脈物流の小口取引にも適用可能なはずである。結果、少額の債券回収や支払いに関わる無駄な業務が削減されるのだ。
最後に、物流と商流の一体化に伴う静脈物流全体の電子化促進にも貢献できる。電子マニフェストの普及や電子契約促進は官民一体で加速しており、法的な裏付けを伴う物流管理は確実に電子化に向かって進んでいる。お金のやりとりは本来物流と一体的に管理されるべきであり、現金の取扱いはスムースな商流におけるノイズに他ならない。経理的・会計的な観点からも両者の一体化は理想であり、すぐに実現出来るか否かはともかく、全体的なベクトルを電子決済に向けること自体が、信頼性・透明性・追尾可能性の高い静脈物流実現に資することは間違いないのである。
いわゆるITベンダーが提供する既存の商品やサービスが、静脈物流に適用可能であるとは限らない。であれば、現場から積極的にそのニーズを発信することで業界全体を変える、そんな心意気や気概が求められているとも言えよう。