日常からドラマを切り取る

半年くらい前にインスタントラーメンの話をブログネタにしました。今回はアニメです。しょうがないのです。家族が横で朝ドラを見ていると、だんだん気になってくるものなのです。

今期の朝ドラの登場人物のモデルは高畑勲ということで、今回は高畑勲展に行ってきました。展覧会は、高畑勲に影響を与えたフランスのアニメ「王と鳥」の紹介からはじまって、遺作である「かぐや姫の物語」まで、高畑勲がかかわったアニメの作品ごとにセル画や背景画、絵コンテ、美術設定、完成したアニメなどが展示されていました。かつてアナログテレビで見たアニメの映像はそれほどきれいという印象がなかったのですが、セル画や背景画、美術設定などは完成したテレビのアニメより数段きれいでした。

面白かったのが物語の題材選びでした。展覧会のHPには、「日常生活を丹念に描き出す手法を通して、冒険ファンタジーとは異なる豊かな人間ドラマの形を完成させます。」とあります。

通常、冒険ファンタジーなど、アニメで使われる話には典型的な型があります。「千の顔を持つ英雄」という本が有名ですが、神話や冒険ファンタジーは「何らかのきっかけで非日常への出立→試練→成長、成果の獲得→日常への帰還」というストーリーになっています。端的に言えば、ドラゴンボールで孫悟空がナメック星にいってフリーザと戦ってスーパーサイヤ人になるのも、桃太郎が鬼ヶ島に出かけて鬼を退治して宝物を持って帰るのも、話の構成としてはあんまり変わらないよね、ということです。

しかし、高畑勲が注力している題材はかなりちがいます。一番有名なのが、アルプスの少女ハイジのチーズパンではないでしょうか。火にあぶってとろけるチーズをのせたパンがとても美味しそうで、それが話題になる。典型的なストーリー展開の要素がないわけではありませんが、「日常生活を丹念に描き出す豊かな人間ドラマ」というのはそのあたりを指すのかなと思います。全作品を一度に見て、一貫した姿勢を感じたのでした。(Y)

タイトルとURLをコピーしました