「多様なビジネスの創出」という視点・・・地域密着型リサイクルビジネスの可能性

メディア掲載

地域循環共生圏を活力あるものにするためには、地域でのビジネス創出が重要な課題である。

かつて地方・郊外では、農林業をはじめとする産業が地域経済を支えていた。現在でも、地方の古民家には養蚕に用いられた部屋が残っていることがある。生活に根差した産業が地域の活力を支えていた名残である。

しかし工業化の進展とともにこれら従来の地域産業は転機を迎え、地場産業が少なくなっていった。地域産業の弱体化は社会流出や少子高齢化加速の一因であることから、今後の地域循環共生圏において、地域の特色を生かして新たなビジネスを創出し、地域内で経済を循環させることが非常に重要である。

近年では、従来の農林業と異なる形で、地域の多様なビジネス創出が進んでいる。例えば、農作物生産にとどまらず、特産品の開発や観光の強化によって地域のブランド化を拡大させる取り組みが進められている。また、IT技術により距離的なハードルを超え、テレワークなどを用いて、全国、全世界を相手にビジネスを行うことも可能となっている。

リサイクルビジネスも、地域循環共生圏における多様なビジネス創出に大きく寄与できる。リサイクルビジネスの貢献には、大きく3つの側面が考えられる。

一つ目は、本業であるリサイクルビジネスを通じた地域循環共生圏の活性化である。リサイクルビジネスは地域密着型ビジネスである。地域経済を支える柱の一つとなり、地元の雇用を創出する役割を担っている。昨今では業界の底上げやイメージアップも意識されており、仕事環境の改善や生産性の向上、先端技術の活用などが進められている。また、リサイクルビジネスはSDGsに直接的に関係するビジネスである。廃棄物の適正処理やリサイクルの高度化などを通じて、地域に貢献することも期待されている。

次に、本業から派生するビジネスの創出という点での期待も大きい。いくつかの地域では、廃棄物処理業者がリサイクルビジネスのリソースをうまく使った先進的なビジネス創出を進めている事例が見られる。例えば富山環境整備は、廃棄物処理施設から生まれる電力や熱を利用し、ミニトマトや花きの生産を行っている他、容器包装プラスチックを100%原材料とするリバースパレットの製造もおこなっている。ミニトマトや花きの生産では、IoTやビッグデータを活用した高度管理、新しい農法の採用など、新しいコンセプトの取り組みがおこなわれている。また、中特グループでは、食品残渣で飼育したダチョウの卵を使った製品を開発している。

もう一点、必ずしもビジネスではないが、地域社会を活性化し、地域との相互理解を深める共生事業も重要である。地域循環共生圏の地元メンバーの一人として、地域での環境ボランティアや環境教育など、地元のことを考えた継続的な貢献活動が期待される。

地元資本の企業が限られる地方・郊外において、リサイクルビジネスは地域経済の柱の一つである。地域循環共生圏の活力向上とリサイクルビジネスの底上げの両面からの取り組み推進が重要といえるであろう。(吉識 宗佳)

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