ファクトリーオートメーション(以下、「FA」。)とは、工場での生産工程を自動化するシステムのであり、製造業では幅広く普及している。FA導入の主目的は、「生産コスト低減」や「生産の精度・柔軟性向上」などであり、従来は個別工場単位での最適化方策として発展してきた。ただし、あらゆるモノがインターネットに接続するIoT時代には、FAにも「オープン化」が求められる。いわゆる「インダストリー4.0」では、部材や部品から製品までのサプライチェーンを構成する全ての工場での生産工程をネットワーク化・最適化する取り組みが拡大しつつある。
FA導入が遅れているリサイクルビジネスにとって、「オープン化」への流れはチャンスであり、現行処理工程の改善のみならず、業界全体に前向きな変革を促す可能性も秘めている。
本稿では、「FA導入」がもたらすメリットと業界変革を促すチャンスについての検証を行う。
目先のメリットとして、「人手不足への対応」が真っ先に挙げられる。労働集約型産業としての限界を迎えつつあるリサイクルビジネスにとって、機械で代替可能な役割は機械に任せることが喫緊の課題となっている。人手不足が賃金上昇を招くことは確実と予見されており、中長期的に見れば積極的な設備投資のチャンスが来ているとの見方が拡がりつつある。
次に「生産性向上」である。選別施設では今も、「土間選別」と呼ばれる重機や人手による勘と経験に頼った作業が行われている。投入原材料の組成や形状を特定可能な製造業とは異なり、中間処理の現場では事前に何が混入するかが予測不能である。その分ハードルは高いが、画像解析技術やAIによる深層学習の急速な拡がりを背景に、建設廃棄物の選別ロボット等も実用化されている。ロボットは疲れないし、休む必要もない。効果的な導入に成功すれば、飛躍的な生産性拡大が期待出来る。
三つ目に「作業工程マニュアル化の徹底」が挙げられる。ISO14000やEA21を導入した中間処理施設は増えつつあるが、今も作業者の経験や属人的なノウハウへの依存度は大きく、結果作業品質のブレも大きい。FA導入には、作業のマニュアル化を強制する効果もあるため、作業品質の確保や労働安全管理の徹底等にも極めて有効と言える。
最後に、FA導入が業界の在り方を変革するきっかけとなり得るのが、「オープン化」するFA間の連動による動脈産業との連携である。仮に取り扱う使用済み製品・廃棄物の組成や設計等を含む履歴が事前に把握出来れば、リペアやりファービッシュによるリユースの拡大のみならず、中間処理高度化の可能性も格段に高まる。その前提こそが動脈側がオープン化するFA情報であり、その受け皿となり得るのが静脈産業のFAシステムなのである。動静脈産業の情報連携は、我が国資源循環システムに革新的な高度化の道筋を示す可能性を秘めている。
業種特性を盾にFA導入を頑なに拒む業界が、製造業並の高い生産性を獲得することはあり得ない。FA導入方策を考え抜くことは、近未来の中間処理施設の在り姿を描く投資に他ならない。