太陽光発電設備リサイクルが挑むべき課題 太陽光の未来を見据えた対策導入を

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本年6月、国は「太陽光発電設備等のリユース・リサイクル・適正処分に関する報告書」をとりまとめた。FIT導入を契機に普及した設備の寿命を25年に設定すると、2030年度の排出見込量は約3万トン、2040年度には約80万トンに及ぶ。同報告書は、埋立よりリサイクルの費用便益比が大きいが、その経済性は高くないため、リサイクルシステム構築・運営に政策的措置が必要、と結論付けている。更に具体策として、メーカに広域認定を活用した自主回収スキーム検討を求めつつ、資源有効利用促進法の「指定再資源化製品」としてリサイクルシステム構築を促すことなどが示されている。本稿では、EPR的な解決方策を示唆する結論の妥当性から検証してみる。

まず、太陽光は継続的に普及し続けるのか。天候任せの不安定性と非効率性への認識は、一般市民にも広まりつつあり、FIT優遇を続けられるとは考えにくい。現実的には、モジュール価格の大幅下落を前提に、通常の電力料金削減メリットが設備設置コストを上回る市場を実現できなければ、太陽光発電はブームで終わる。25年後に迎える既存設備廃棄をピークに発生量が激減するなら、制度化は不要である。

次に既存制度との兼ね合いで見ると、住宅向け太陽光発電設備は、残置物としての一般廃棄物ではなく、解体工事に伴う産業廃棄物扱いとなる。我が国で解体される住宅の平均築年数は27年であり、家電製品のような買替時回収は期待出来ない。実質的排出者が解体業者や施工業者になるなら、アルミ枠材等はサッシ等他品目と一緒に有価販売され、フロントカバーは窓等ガラス類と一緒に適正処理される。メガソーラーに至っては、FIT買取価格算定時に撤去・廃棄費用が含まれており、排出者責任での適正処理は担保されている。要するに廃棄時にはメーカの出番が見当たらないのである。

最後に、経済性の議論である。同報告書では、FIT価格算定時の根拠であるシステム価格の5%をベースに、屋根置きで3.75 万円/kW、平置きで2 万円/kW(運搬費は別)という過大な撤去費用を設定している。解体処理時において、エアコン等有価物を除けば個別撤去はあり得ない。撤去費用を除いた試算では、その費用便益収支は-580円/トンに過ぎない。ASR等とは異なり、不法投棄リスク回避のために資金プールを作る必然性はない。

以上より、報告書に示されたビジョンは「的外れ」との結論になる。では未来を見据えて今、何をすべきなのか。コモディティ化が進む太陽光モジュールの発電効率が飛躍的に高まる目途がない以上、価格と有害性の低減こそがメーカの役割である。具体的には、銀等調達費の高い部材や、結晶系の鉛・化合物系のカドミウム等を含む部材の利用抑制に資する技術開発が求められる。一方、リサイクラーの役割は、既存システムを活用して、パワコンや架台を含む設備全体での有価取引を実現することにある。太陽光モジュールに特化した技術や設備よりは、ロジスティクスの高度化が有効となろう。

資源性を最大限抽出して、有害性を極小化することがリサイクルシステム構築の課題である。品目のみに焦点を当てると、時に判断を誤ってしまう。

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