「持続可能性」への挑戦 短期的経営指標と中長期的な持続可能性の両立

メディア掲載

本連載を通じて、モノが溢れる人手不足の先進国における「生産性」のあるべき姿を考えてきた。具体的には、敢えてバズワードを含む流行語を切り口にリサイクルビジネスにとっての意義を見出すことで、外部環境変化が実務にもたらすインパクトに係る検証を行なってきた。その根幹には「生産性って何だろう?」という素朴な問いかけがあり、一企業あるいは社会全体が求める新たな付加価値の指標を見出したいとの想いがある。

ここまでの検討を踏まえると、「持続可能性」の追求こそがこれからの時代の企業経営等における付加価値との結論が、筆者の現時点で考えである。ナイーブで倫理的な主張ではなく、企業は倒産すれば終わりであり、社会の安定と発展はその大前提となるからだ。

最終回となる本稿では、「持続可能性」追求の要件となる「ESG」の視点から、これまでの議論を整理する。

まず、「E」(Environment・環境)について、産業廃棄物処理業等リサイクルビジネスの存在意義が資源循環促進と環境負荷低減を担うことにあり、事業活動の継続はそのまま環境保全への取り組みと歩調を合わせている。だからこそ、「低炭素化」に資する事業活動の質的な改善や、「海外展開」による面的な事業領域の拡大を通じたさらなる社会貢献が求められている。原単位当たりのCO2発生量削減、資源化率や再資源化手法の質的改善を公正な条件の下で競うことが、本業の生産性向上につながる。

次に「S」(society・社会)である。「SDGs」はその究極的な目標であり、リサイクルビジネスもその活動スコープを拡大する必要がある。例えば「ダイバーシティ経営」の実践は女性や高齢者に活躍の場を与えるとともに、企業側にとって人手不足解消への効果が期待できる。また、「地方創生」の実現は地域産業にとっての課題であり、大規模化・民営化・多角化等の手法で、自治体等との連携を図りながら域内にカネ・ヒト・モノの取り込む必要がある。さらに消費者性向の変化を踏まえた「コト消費」への理解を深めることも、新事業創出に向けたヒントも与えてくれる。

最後に「G」(governance・企業統治)である。「労働安全確保」の徹底は業界の魅力向上に向けた最低条件であり、一定のコストがかかっても新技術導入等による対策を急ぐべき課題である。労働集約型産業である以上、それでも不足する人手は「外国人材活用」で補うことになり、その対象人材特定や待遇改善方策導入を急ぐ必要がある。間接的であるが、「電子決済」の活用は情報化促進による多種多様な取引の透明性・信頼性・追尾可能性確立を促すことで、業界全体に効率化や規律の徹底を求めるきっかけにもなる。最後に「事業継承」は、事業継続の方針に関わる課題であり、企業統治の根本として突き詰めるべき時が来ている。

以上に示した各キーワードは、他業種にも共通する中長期的な課題に位置付けられる。売上高や利益率等で測る短期的な経営指標の改善と中長期的な「持続可能性」確保の両立こそが、「生産性革命」という大命題に挑む我々にとっての新たな挑戦になるのである。

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