「労働安全確保」の徹底・・・業界全体の持続可能性が問われる課題

メディア掲載

厚生労働省の「労働者死傷病報告」によれば、2011年から17年までの間に産業廃棄物処理業の死傷者は約18.7%増加している。同期間の全産業死傷者数が概ね横ばいであるにも関わらず、である。その具体的な内訳としては、「墜落・転落」が21.4%で最も高く、「はさまれ・巻き込まれ」が21.0%、「転倒」が11.9%、「動作の反動・無理な動作」が9.7%で続いている。なお、起因物別の発生状況を見ると、フォークリフト等を含む「動力運搬機」が31.5%で最も高く、「仮設物、建築物、構築物等」が13.4%である。

残念ながら、一般論としてリサイクルビジネスでの現場作業の危険度が高いことは事実であり、その改善が急がれていることに間違いはない。

本稿では、「労働安全確保」徹底の必然性およびそのための具体的な方策等についての検証を行う。

全国的な労働力不足の長期化が確実視される中、業界内の人手不足は深刻化しており、現場作業に従事する作業員を確保することは極めて困難になっている。もはや就労者に支払う賃金の上積みは不可避だが、建設業、運送業、サービス業等他産業とも人材獲得分野で競合する中、労働安全確保は最低限の要求事項である旨について再認識する必要がある。また、今後労働市場への供給が期待される新規就労者の多くは高齢者もしくは女性と見られている。結果、現場作業の経験値に依存する作業現場のリスクはさらに高まる可能性が高い。したがって、従来成立してきた業務フロー全般の見直しが必要とされる可能性が高いのである。

以上は、個社レベルで捉えるべき危機意識を超えて、業界全体が持続可能正を確保する上での課題と認識すべきである。労働集約型産業からの脱却を視野に入れて、過渡的対策として労働安全確保を徹底するために、現実的な対応策は何なのか。

理想的には、イノベーションの力を借りた省人化および無人化範囲の拡充である。就労者に支払う賃金上昇は、そのまま設備投資額拡充に向けたインセンティブになり得る。単純に言えば、実質500万円/年の支払いが必要な就労者を4名削減出来るなら、1億円の投資を5年で回収することが出来るのだ。例えば無人フォークリフトの導入等により、倉庫等での作業に係る労働安全リスクを低減させることもできるはずである。

過渡的な次善策として、作業者側の管理徹底にイノベーションの力を用いることも考えられる。特に多能工的な技能を担う就労者の作業をロボット等に置き換えるにはいまだに技術的ハードルが高い。ただし、ウェアラブル端末を含むセンサー機能を活用することで、作業者側の位置情報やバイタルサインを把握しつつ、警告領域検知・アラーム等により現場作業のリスクを大幅に低減することは可能であり、他業界では既に導入が進められている。

5Sに代表される現場管理の徹底はわが国製造業の現場が有する強みであるが、今やそれだけでは不十分である。これからの労働安全確保には、イノベーションの利活用による業務フロー全体の改善が求められている。

20180918131606b8ce.jpg

タイトルとURLをコピーしました