「低炭素化」が生み出す競争力・・・不可逆トレンドがもたらす価値

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パリ協定批准に伴い、2030年度までに26%の温室効果ガス削減を目標に掲げる我が国は、あらゆる手段で低炭素化への取り組みを進める必要がある。廃棄物分野での温室効果ガス排出量は基準年度の2013年度実績で3,705万t-CO2、国内総排出量の2.6%に過ぎないが、3Rの徹底のみならず、再生可能エネルギー供給のポテンシャル等からも、その加速への期待は大きい。地球温暖化対策計画でも「廃棄物発電」「燃料製造(RPF)」等がCO2対策に掲げられており、「最終処分量の削減」によるメタン対策も求められている。

一方、廃棄物処理には適正処分と資源循環促進という本来的な役割があるため、低炭素化自体が事業目的にはなり得ない。その担い手であるリサイクルビジネスにとっては、自社競争力を強化する手段として捉えることが自然である。ではどうすれば「低炭素化」に資する取り組みを価値に転換出来るのだろうか。

まず、処理手法等の低炭素化効果を排出事業者に訴求することが王道であろう。「カーボンプライシング」導入までが議論される中、特に大企業にとっては事業活動に伴う低炭素化が避けて通れない命題になっている。廃棄物処理の場合、委託先の事業者に任せられるという点で、比較的容易にその効果を享受できる。それでも現状では、リサイクルビジネスの側から価格と並ぶ重要なクライテリアとしてPRできているとは言えない。なぜなら処理プロセスの低炭素化効果について、信頼性のある定量的裏付けを持って提示出来る企業が限られているためである。単純焼却よりも熱利用や発電を伴う焼却、メタン発酵等の低炭素化効果が高いことは自明だが、定性的なPRを超えて、原単位ベースの削減効果を定量的に示すためのツールやルールの整備等が求められているのだ。

次に、低炭素化を政策的に遂行する行政からの支援獲得も一つの手段となる。特にエネルギー回収を前提とした設備投資補助金獲得やFIT制度の活用は、新規事業の投資回収期間短縮に直結する。インフラビジネスとはいえ、回収に20年以上の期間が必要な投資が可能な企業は限られていることから、低炭素化に資する施設整備等に対しては、行政の側でもより積極的できめ細かい支援メニューの更なる整備・充実を期待したい。

最後に、目先のコスト削減効果にも注目すべきであろう。特に収集運搬分野では、積載率や輸送効率の改善がドライバー人件費や燃料利用量の削減に直結する。また、例えば建設混合廃棄物の選別行程を通じて、セメント工場での燃料利用が可能な素材の回収歩留まりを高めることができれば、低炭素化のみならず、自社にとっての埋め立てコストも削減できる。

本年6月、全国産業資源循環連合会は、「低炭素社会実行計画」に基づいて「温室効果ガス削減目標等を定め、CSR報告書等により公表し、全産連が行う実態調査に協力する企業」131社を公表した。こうした流れが加速することは確実であり、気候変動の悪影響を社会全体が実感している中、低炭素化が生産性向上の手法として認知される時代は確実にやってくる。

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