「ビットコイン」の価格乱高下をきっかけに、仮想通貨への注目が高まっている。仮想通貨そのものは投機商品に他ならないが、その技術的な裏付けとなる分散台帳を実現する技術=「ブロックチェーン」(以下、「BC」。)には様々な期待が寄せられる。具体的には、先行して農産物流通管理やヤシ殻燃料の生産・流通管理(フェアトレード)等幅広い分野で、BC活用が始まっている。
リサイクルビジネスもその例外であってはならない。資源循環適正化に求められる要件は、「透明性」「信頼性」「追尾可能性」の3点である。(慶応義塾大学細田衛士教授)BC活用はその要件を満たすため、近い将来分散台帳技術を活用した取引がリサイクルチェーン全体にまで及ぶ可能性を秘めている。本稿では、リサイクルビジネスがBCを活用する意義についての検証を行う。
まず、「透明性」である。BC導入はデータベースの一部を共通化して、取引に参加するプレーヤーが各社のシステム内に同一の台帳情報を保有することを意味する。その共有範囲について一定の制限を設けるにしても、取引参加者が閲覧する情報は同一であり、必要な範囲の透明性を確実に担保することが出来る。ちなみにBC技術は仮想通貨のように誰もが参加可能な「パブリック型」だけでなく、「プライベート型」や「コンソーシアム型」など、データベースへのアクセスを特定参加者に限定して構築することもできる。したがって機密を含む情報の一般開示リスクを感じる必要は全くない。
次に「信頼性」について、分散台帳であるBCのデータ改ざんが技術的に不可能であることは広く知られている。問われるのは情報を入力する側の信頼性だが、ほぼリアルタイムでの相互チェックにより、偽情報の登録抑止を図ることは可能である。例えば排出側が入力する品目・量の情報や集荷時間等について、処理側が入力する情報とリアルタイムで同期されるため、取引参加者同士のデータの比較検証が可能になる。共通のデータが保有されることで、データ自体の信頼性も確実に高まることが期待される。
最後に「追尾可能性」だが、分散台帳技術の威力が最大限発揮される領域と言える。例えばリサイクルチェーンを通じたトレーサビリティ管理の前提として、個社システムのデータ連携を図る際、データ形式や管理方法、同期の手法等がバラバラであること自体がコスト要因となっている。BCの場合、実質的にデータベースを共有することになるため、データ連携自体が不要であり、そのためのコストも不要になる。取引参加者が自らの情報を入力した段階で、トレーサビリティは完了するとさえ言える。
BCはインターネット経由で「情報」のみならず、「価値」を流通可能にした技術と言われる。例えば何等かのかたちで仮想ではない電子マネーを取り扱うならば、銀行や信販会社に頼らず取引参加者間の代金決済も可能になる。小口取引が多いリサイクルビジネスとBCの親和性は極めて高いため、業界全体として導入を目指す優先度も高いと言えるであろう。