第4次産業革命に向けたリサイクルビジネスの流れは、「ゼンロボティクス」と呼ばれる建設混合廃棄物選別ロボットが体現している。コンベア上を流れる廃棄物を画像識別した上で、ロボットアームにより品目別の選別を行う。更に世界中で取得される画像データがフィンランドにあるサーバに蓄積され、ビックデータ解析を通じて更なる選別精度向上を図る、という仕組みである。
土間選別等の過酷作業に従事する作業者の不足を受けて、国内でも商用稼働が相次いでいる。労働集約型産業からの脱却が急がれる中、ロボット導入への期待は大きい。本稿では、段階的なロボット導入の可能性やその効果についての検証を行う。なお、ここではロボットを、「人に代わって作業をする機械」と定義付け、検索エンジンやAIスピーカーのようなソフトウェアは含めない。
まず、ステップ1は規格化された空間で生産性を向上させるために導入するロボットである。製造業の自動化設備、すなわちFA機材等が典型的な先行事例となる。取り扱う部品や部材の形状のみならず、素材の堅さや性状、配置や作業フロー等が全て予め決まっている設備では、複雑な判断が求められる範囲は限定的であり、自動化及び効率化に資するロボット活用が幅広く普及している。今後普及が期待されるのが物流領域であり、特に倉庫内でのピッキングや運搬の自動化に向けて、宅配業者等が先行的な設備導入を進めている。リサイクルビジネスも、倉庫やヤードのレイアウトにおける工夫や定型化等を前提に、原燃料の在庫管理や設備への投入など、人的負荷の大きい作業への導入が考えられる。
ステップ2は「ゼンロボティクス」のように、設備に投入する物品の素材や形状のばらつきが大きい品目に対応する作業である。この場合、画像解析やAI等による予測と認識行為が不可欠となり、既存FA設備などよりも自動化の難易度が高まる。技術的な課題も残される中、リサイクルビジネスで導入が先行可能な理由は、「原燃料となる廃棄物が対象であるため、選別時にはある程度のミスや対象物の破損が許される」という業種特性にある。その意味で、他業界に先駆けて、選別以外の作業工程でも新技術の開発・導入に向けたチャレンジを継続していくことが肝要である。
最後のステップ3は、自動化には馴染まないような、不確実性の高い作業におけるアシストロボットであろう。介護施設ではヘルパー向けのアシストスーツ、病院等では手術支援ロボット等が普及し始めている。リサイクル施設でも、熟練作業員の経験や判断が不可欠な工程は必ず残る。一方、今後労働市場への参入が期待される潜在労働力は高齢者または女性が主力となる。労働安全管理を徹底しながら、体力や経験が不十分な人材の採用拡大を図るとの視点から、ロボット活用を拡大するとの事業判断もあり得るのである。
今こそ、事業の持続性担保と生産性向上の実現に向けて、「機械にできることは機械に任せる」との経営姿勢が求められているのではないだろうか。