「セキユリティリスク」と情報開示・・・リスクに怯まぬ情報の開示と利活用

メディア掲載

IoTがもたらす「つながる世界」で最大の課題の一つは情報のセキュリティ確保にあると言われる。知人の専門家によれば、インターネットに接続する限り、絶対にハッキングされない設計は論理的にあり得ないとのことである。様々なモノやサービスがつながれば新たな付加価値が生まれるが、当該ネットワークに接続する全ての機器類は、たった一つのセキュリティホールの存在からその全てが情報漏洩等のリスクに晒される。無論、技術的な防護手段は日進月歩で進化しているが、コストメリットで考えれば現実的でないレベルであっても、全ての関係者がある種の覚悟を持たなければ本格的なIoT時代は到来しないのである。

本稿では、リサイクルビジネスも直面することになる「セキュリティ」という課題を背景にしつつも、求められる情報開示等に係る検証を行う。

そもそも業界全体の信頼性確保に向けて、リサイクルビジネスには積極的な情報開示が求められている。優良産廃処理業者認定の条件となる遵法性や財務情報等は言うまでもなく、排出事業者から最終処分場に至るマニフェスト情報も、取引に参画する業者間では品目・量ともに完全に共有されているはずである。では逆に、機密管理が求められる情報とは何か。

まず、民間事業者である以上、顧客との取引価格に関する情報が想定される。ただし、電気、水道、ガス等のインフラビジネスで、取引価格が不透明な業種は他にない。ある案件で排出事業者から相見積もりを要求され、4社中3社はほぼ同じ単価であるにも関わらず、1社のみが40%安の価格を付けて落札した、との事例を耳にした。数%ならともかく、40%安はもはや企業努力の範囲を超えており、不法投棄リスクのあるダンピング行為に他ならない。この業界に限って言えば、取引価格の公開は、業界の健全化に向けた必然だとさえ考えられる。

では特殊な中間処理技術はどうか。特許を取得したプラントメーカはその技術を開示して他社差別化手段に活用している。とは言え、業界を見渡せば、競争力の高い業者は機械技術よりもその運用手法の最適化で優位性を保っていることがわかる。すなわち、IoTやAIが代替可能な領域での勝負が一般的なのである。であれば、「セキュリティ」に配慮するよりも、自らが持つノウハウをデジタル化・形式知化することこそが競争力強化の切り札となり得る。

最後に、将来的に動静脈連携が実現した際、動脈側が静脈産業側のセキュリティの脆弱さを指摘して躊躇する可能性もある。それでも、現実的に動脈側が開示する情報の範囲は「昔の最先端技術」に限られるため、漏えいリスクの高い技術情報等が提供されることはなく、排出されるまではどの道利用価値がないのである。

こうして考えると、業界に求められる技術は、むしろ「ブロックチェーン技術」のように特定法人が情報を独占することのない透明性と改竄防止の確実性が保証されるインフラではないか。この業界に限って言えばセキュリティリスクを問うより、積極的な情報開示や利活用に力点を置いた議論が優先すべきである。

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