地域社会が担う未来「持続可能な分散型社会」の実現を目指して

メディア掲載

「地域循環共生圏」というコンセプトには、地域から人と自然のポテンシャルを引き出すことによる成長と発展への期待が込められている。都市化やグローバル化を背景に富の偏在や格差拡大に伴って取り残されてきた地域社会が、自然環境の保全や脱炭素化にも資する個性ある発展を図ることが、その理想像として据えられてきた。

一方、本年2月から本格化したコロナ禍は、従来型システムの脆弱さや弱点を浮き彫りにすることで、全く別の観点から地域社会の重要性を高めている。感染症対策の名の下、人々の接触や移動、健全な野心や好奇心が導く社会的活動の全てが制約されている。多くの国民にとって、家庭を中心とした地域社会での活動のみが、公私の大部分を支配するに至っているのである。

無論、運輸、小売り、医療、介護等いわゆるエッセンシャルワーカーは、感染リスクに晒されながらも従前通り働いている。感染症予防は業務効率を下げる受け身の対策であり、新たな付加価値を生んではいない。ドローンやロボット等の活用による機械代替への期待も高まるが、その実現目処は立っておらず、業務従事者のプロ意識に頼る以外に社会生活を成り立たせる術はない。

一方、この半年で急速に普及を遂げたのがサイバー空間である。多数の企業でリモートワークが常態化しており、家庭内でもWEB経由の買い物や外食の宅配需要が急速に拡大している。こうした中ウィズコロナと呼ばれる時代に地域社会が果たす役割は何か、むしろイノベーションの加速やサイバー空間の発展、さらには人々の価値観の変化がもたらす「希望」を見つめ直すべき時が来ている。

例えば、現行の社会経済システムの問題点として、「都市化」に伴う過剰な一極集中の加速に歯止めがかかることはなかった。それが昨今のリモートワーク拡大により、期せずして都市住民の郊外等への移住きっかけとなっている。結果、通勤時間短縮や子育て世代の家事分担平準化などのソフト面に加え、電子決済や電子契約の急速な普及といったハード面での効果も生まれつつある。

また、コロナ禍でのマスク不足は、「グローバル化」に伴ういびつな産業構造の象徴と捉えられている。価格競争を避けられない低付加価値製品を全て海外で生産する分業リスクは明らかとなり、国内生産の見えない付加価値が見直されることで、リショアリングに伴う補助金獲得倍率が急騰するなどの現象も見られはじめている。

最後に、「脱炭素化」の停滞を打破する取り組みも芽生えつつある。特に資源矮小国の我が国では、輸入資源への依存や広域的なエネルギー供給のリスクを顕在化させつつある。全国的な交通量減少は化石燃料利用の低減可能性を示唆しており、無駄が多いライフスタイルの見直しや再生可能エネルギー普及の後押しになることは間違いない。

以上に示したトレンドを支えのが、地域社会が持つポテンシャルである。無論、「規模の経済」がもたらすメリットに背を向けることはできないが、「持続可能な分散型社会」を目指す社会のベクトルは不可逆となっている。

これまで本コラムに整理した地域社会の課題解決に向けたアプローチが、コロナ禍を乗り越えた「地域循環共生圏」実現を目指す皆様にとってのヒントとなることを願っている。(本連載は終了します。)

林 孝昌

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