今、リサイクルビジネスは冬の時代にある。昨年後半からの金属価格の長期低迷や原油価格の急落には、回復の目途が全く立っていない。原燃料製造業としての顔を持つリサイクラーにとっての売り上げ減少に直結しており、事業継続自体が危ぶまれる業態もある。
ただし、中長期で見れば資源相場は必ず反転する。世界経済が全体として成長し続ける中、採掘可能な天然資源の量は限られており、戦術的な増産や投機による相場維持には限界があるためである。
未来を創るビジョンと投資を語る上で、目先の短期的な相場変動に惑わされてはならない。多少の収益変動は織り込みつつも、原理原則を守ったビジネスモデルには必ず持続性を見出せる。本稿では、リサイクルビジネスの成立要件の整理を行った上で、業界の未来を予見する。
ほぼ全ての品目について技術的・論理的にはリサイクルが可能な中、廃棄物処理に廻すか否かは純粋に経済合理性で決定されており、その成立要件は概ね3つに集約される。まず、排出者から見たリサイクル料金が廃棄物処理料金より安くなければ、リサイクルは成立しない。次に、中間処理費用と諸経費から再生原燃料売却費を引いた金額をリサイクル料金が上回ることで、リサイクラー側に利益が生じることも絶対条件となる。最後に再生原燃料の売却費が、天然資源取引価格より安価であることが求められる。循環資源はあくまで代替原燃料であり、品質的に天然資源を上回ることはあり得ないためである。
以上の成立要件の構成要素のうち、起点となる廃棄物処理料金は、地域や品目毎に概ね長期安定傾向にある。また、中間処理費や諸経費は事業開発段階で目途が立つはずであり、変動幅が大きいのは天然資源相場とその従属変数である再生原燃料売却費となる。
リサイクルビジネスが廃棄物処理業と原燃料製造業の複合産業である以上、前者で足元を固めつつ、後者で売上や利益を伸ばす体制整備が急務である。一本足に偏ったビジネスモデルの限界は、今のスクラップ業界の窮状が証明している。だからこそ、逆有償と有償の取引に対応可能な技術とノウハウを兼ね備えたリサイクラーの成長と育成が、業界全体の課題となる。
無論、業界の未来を担う企業には、短期的な天然資源相場変動に耐えうる体力も必須となる。中小零細のオーナー会社が大宗を占めるこの業界では、M&A等を通じた再編が困難であったが、冬の時代だからこそチャンスが生まれる可能性もある。明確なビジョンと体力を有する中核企業が積極的な攻勢を仕掛ければ、資源相場が反転する頃には全く違う世界が見えてくるのではないか。すなわち、競争と淘汰を乗り越えて、業界全体が進化することが期待出来るのである。
社会インフラとしてのリサイクルビジネスは、すでにグローバル社会経済システムの中に組み込まれている。今後、その重要性が高まることはあっても下がるはずはないとの強い信念を持って、全ての関係者が前を向くべき時が来ている。