家内の誘いで、ミュージカルRENTを観てきました。劇場では3回目ですが、なんと17年ぶり。全編英語ですが、日本人の山本耕史さんが進行役のマーク、クリスタルケイさんがモーリーンの主要キャストで参加しており、二人ともが素晴らしいパフォーマンスでブロードウェイキャストに溶け込んでいました。オフブロードウェイ起点の作品なのでオーケストラはなし、演奏は5人のシンプルバンド編成ですが、音楽も歌声も素晴らしかった。
本作の脚本家はビリー・アロンソンで、プッチーニの「ラ・ボエーム(≒パリの芸術家達」をNYに舞台を置き換えて再現するアイディアを思いつき、ジョナサン・ラーソンが自伝的要素を加えてその上演を果たしたのです。写真は当時のラーソンの私物ですが、彼は初演日未明に若くして急逝しました。”One Song Glory ”という劇中エイズに侵されたミュージシャン役キャストの曲で予言したかのように、古典的名作を世に送って人生を終えたのです。
名曲盛りだくさんで映画にもなったRENTですが、最も有名で印象的な曲が2幕の初めに主要キャストが並んで歌う”Seasons of Love”です。「525,600分の大切な時間、どうやって生きて感じよう?日の出、飲むコーヒー、距離、笑い、争い?せっかくなら愛の季節で数えたらどうだろう。」というシンプルで力強いテーマであり、ストーリー全体を貫くモチーフです。20代の初観劇から齢を重ね、当時以上に重く刺さるメッセージになっています。
もう一つのモチーフは”No Day But Today”という曲です。「いましかないし、ここしかない、運命は想い通りにはならない。ほかに道はないし後悔しないためには、今日しかない。」惰性で暮らす今の私にも最高の励ましです。もしかしたらラーソンが本当に伝えたかったことは「日々を大切に過ごそう」という陳腐な想いだけだったのかもしれません。ただそんな想いを他人の心に伝える表現ができる芸術家は本当に素晴らしいし、羨ましいなぁ。(T)