大学までの一貫校で高校3年生になった私の姪が、祖母にあたる母に聞いたそうです。「おばあちゃん、私は何学部に行けばいいかな?」そんなの自分で決めるしかないじゃないのと即座に一蹴したとのこと。私からも当人に伝えるつもりは皆無ながら、心の中では自分が学部時代に在籍した「文学部」がいいのではと考えています。なぜなら、小説でも何でも本を読むことでこそ、時代の変遷を問わない知性の幹が育まれると信じているから。
当方自身、学歴はともかく世間が認める資格は一切持っていません。これまで働く上で役立ってきたのは、「速く読む力」「正確に文章を書く力」「教養に裏付けられた発想力」だけであり、いずれもたくさん本を読むことで培った力です。昨今の流行り言葉である「スキルアップ」ですが、寿司職人や宮大工のような五感や手先を使う職業は別として、ホワイトカラーのプロフェッショナルの場合、表層的な技術は時限的な価値しか持ちえません。
少し前、「STEM人材」という理系のスキル獲得が即戦力になる成功への近道のような風潮がありましたが、本当でしょうか?技術発展のスピードが異常に加速しているいま、例えばプログラミング言語もすぐに時代遅れとなり、製造や医療分野でも常に現場での学び直しが必要となります。ましてやグーグル先生やAI活用が一般化している中、目先の知識や形式通りの資料を得るだけなら、「検索」や「プロンプト」が巧ければ済んでしまいます。
時代を問わず、経営の現場でも統計活用や財務分析等の技術は必須です。ただ、あんなものは働き始めてから片手間で勉強すればすぐに身に付くので、新しい付加価値を生み出すことはないのです。不適切な昭和おじさんが、可愛い姪を含む若い方々に伝えたいメッセージは唯一つ、「たくさん本を読みましょう。」自分だけのユニークな知性の幹が太くたくましい人なら、時代に合わせて必要となる情報を吸収して簡単に活用できるはずです。(T)