「Society5.0」のインパクト 礎となり得るDFFTの実現

メディア掲載

Society5.0とは、IoT・AI等の先端技術導入によって、これまでは行われてこなかった知識や情報の共有・連携を図ることで、課題や困難を克服する新たな付加価値を生み出す情報社会のことである。「地域循環共生圏」の創出には、Society5.0のもたらす技術や新たなビジネスが必要不可欠となる。本稿では、わが国が推進するSociety5.0のインパクトを最大限活用するにあたり、何がカギとなるかを考えていく。

Society5.0の世界では、例えば車の完全自動運転化やモノの需要予測等が可能となる。完全自動運転化の実現は、近年社会問題となっている高齢者ドライバーの誤操作による自動車事故の多発という課題の解決策となり、加えて安心で快適な移動手段の一つとなり得る。モノの需要予測は、AIを活用した予測により不要な生産を回避することで、過剰な在庫や大量廃棄という課題を解消できるため、モノのライフサイクルにおける環境負荷を低減することができる。更に静脈産業においては、センシングによるごみの効率的な回収や、AIを活用した産業廃棄物の自動選別の実現が可能であり、その結果としてコストの削減や省人化等の効果が期待されている。

Society5.0の実現がもたらす取り組みに共通する点は、「21世紀の石油」と呼ばれるデータの有効活用にある。いずれの取り組みもデータの収集・分析による新たな付加価値創出が求められるため、どのようなデータをどのように収集するかが重要となる。収集されるデータは、信頼性の欠くものであってはならず、データの活用範囲が制限されないものが望ましい。

だからこそ求められているのが、DFFTの実現である。DFFTとは、Data Free Flow with Trustの略語であり、「信頼性のある自由なデータ流通」を指している。昨年の6月に開催されたG20大阪サミットで安倍総理が、「デジタル時代の成長のエンジンであるデータ流通、電子商取引に関するルールづくりは急務であり、そのような環境をつくり出すには、DFFTの観点から、WTOでの電子商取引に関する交渉を進めていく必要がある」と言及している。しかしながら現状、信頼性のあるデータであることと、自由なデータ流通を行うことの両立が困難であることは否めない。その実現に向けたカギを握るのが、信頼性の高い情報プラットフォームの整備である。部門単位でバラバラな IT システムの運用を行ってきたことによるレガシーシステムの乱立や、システム運用のノウハウが属人的となることで生じるブラックボックス化といった問題に直面している日本企業は少なくない。共同利用が可能な情報プラットフォームの活用により、個社レベルで自由なデータ流通の足かせとなっている課題の改善も可能となる。

理想論としては、最終的に国際的な情報プラットフォームの整備がなされ、世界規模でDFFTが実現されるべきだが、各国の足並みを揃えることは極めて難しい。まずは国内で統一的な情報プラットフォームの整備を行うことで、DFFTの実績を創るべきと考える。その上で、Society5.0の実現に必要な情報基盤を整備することが、「地域循環共生圏」創出に向けての大きな一歩となるのではないだろうか。

石田 翔一

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