昨年12月にいわゆる改正入管法が成立、本年4月から施行される。その趣旨は国内で不足する人材や熟練した技能を有する人材の確保にあり、新たな在留資格制度が設けられることになる。今般の改正では対象業種として介護や外食等14業種が定められており、産業廃棄物処理業等は含まれない。
リサイクルビジネスの人材不足に対する危機意識も極めて高く、業界団体主導で実態調査等も進められているが、「安価に3K労働をこなす人員確保」を目的とした外国人雇用は最早成立しえない。決して人道的な観点のみならず、他業種や他の先進国等との競合が前提となる中、日本人と同様に外国人材も売手市場だからである。
本稿では、人手不足が顕著な業界の現状を踏まえて、リサイクルビジネスが外国人材を活用するための条件の検証を行う。
まず、適正な受入環境の整備である。既存の「外国人技能実習制度」は、実習を名目に低賃金で単純労働をさせるる欺瞞が横行しており、結果脱走者や不法滞在者を生む温床となってきた。今後、長期的な雇用者の定着を見込むには、日本語や文化の教育等の研修プログラム導入、寮等の安定した居住地や事業所までの移動手段確保に加え、地域の最低賃金を超える月給の支払い等が大前提となる。特に体力的に過酷な工場労働等を求めるのであれば、少なくとも、外食産業等先行して受入が認められた4業種以上の雇用条件の提示が、人材確保の大前提になる。
次に、若手人材の知識や技能を現場で活かせるポストの提示である。誰でも出来る仕事を入れ替わりで採用する体制の中では、施設の安定的な稼働が不可能となる。特に手作業のみに依存する単純作業者は、建設業を含めて給与の高い別の職場を求める可能性が高い。一方、例えばある古紙リサイクル施設では、設備の維持管理を行うエンジニアリング技師の不足を東南アジア出身の理系大卒者で賄うことで、社員のモチベーションを確保しつつ安定操業を実現している。設備を相手にするエンジニアは、作業時の日本語コミュニケーションへの依存度が低いため、スムースな対応が可能である。また、日本人に限らず、エンジニアは自らの技術や実績を活かせる職場に対する愛着が強いため、現場への定着率も高くなることが期待できる。
最後に、出身国との継続的なコミュニケーションを通じたネットワーク強化にも期待したい。行政の事例として、北九州市では、長期に亘りJICAプログラム等を通じて幅広い途上国地方政府から研修人材の受入を行ってきた。来日研修に参加した人材は、今や各国地方政府の上層部に登用されており、北九州市が他都市では不可能な程の海外ネットワークを確保出来ているのはその効果とも言える。民間企業でも海外展開を見据えた積極採用は可能なはずであり、特に有力企業の幹部人材であれば、日本人以上の待遇で採用を行うことも、中長期的に前向きな戦略となり得る。
これからの外国人材確保は、単なる目先の危機への対策ではなく、未来を見据えた前向きな投資と捉えるべきと言える。