「AIスピーカー」への期待・・・本命は「BtoB」用途での展開

メディア掲載

国内外の企業による「AIスピーカー」上市が相次いでいる。現状のターゲットは家庭のリビングであり、音声入力による情報検索、電灯や掃除機の操作等を行うことができる。将来的にはあらゆる家庭内機器を接続・操作するハブ機能を果たすことが期待されており、いずれ産業用途にも展開されていく。

スマートフォンという入出力端末がほぼ支配的な地位を確立したいま、AIスピーカーがその代替機器となることは考えにくい。情報量やスピードでは文字入力に優位性があり、スピーカーからの出力が音声情報に限定されるためである。むしろ、スマートフォンやPC操作が出来ない場面でこそ、その威力が発揮され、IoT時代を支える補完的ツールとして普及していく。

本稿では、リサイクルビジネスの現場を念頭に、AIスピーカーの有効な活用方策についての検証を行う。

まずはそのハンズフリー機能が、ドライバーや現場作業者の役に立つ。運転中や作業中の端末操作が不可能な場面でも、音声入力により運行指示や作業指示を得ることができる。例えばカーナビと連動させることで走行中に行先指定を行うことができるし、新人作業員がライン上で業務プロセスのインストラクションを受けることもできる。音声のみで事足りる情報のやりとりは、スピーカー経由で完結する。

次に、音声認証機能の活用も有効である。例えば排出現場や処理施設での本人認証により、各ゲートウェイでの本人確認を通じた実質的なトレーサビリティ管理(マニフェスト)が可能となる。また、作業員の役割や職能に応じた立ち入り区域の制限や機材操作者の特定により、労働安全管理の徹底を図ることも期待される。音声認証技術は未完成と言われるが、バイオメトリック認証の一形態としていずれは確立されるであろう。AIスピーカーはその手軽な入力端末として幅広い用途に普及する可能性が高い。

最後に「モニタリング機能」である。音声認識の対象は人の声だけでなく、例えば設備や機材等の異常音検知にも適用することができる。すでに普及している監視カメラの役割を補完する防犯用途の活用できる。

以上は全てがセンサー端末としての利便性を活かした機能であり、AIスピーカーの本質はその次の段階への展開にある。スピーカー経由で得た音声情報をビックデータとして蓄積した上で解析を行い、付加価値の高いナレッジとして当該端末へのフィードバックを行うのだ。例えば「ドライバーに話しかけ、返事の有無や声色で眠気等を探知して車両を止める」「有能な作業員の行動様式を分析して、インストラクション内容を高度化する」「24時間稼働の長期間モニタリングを通じて、故障要因となる異常音自体を特定する」などの付加価値を生み出すことがAI導入のゴールであり、実現可能な未来の用途なのである。

筆者個人の嗜好として、家電製品使用時はスピーカーよりもリモコン端末での操作を選ぶ。AIスピーカーへの期待は、むしろBtoB用途でこそ無限に広がる可能性を秘めているものと考えられる。

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