廃プラスチック等循環資源を「都市油田」に見立てた燃料製造への機運は、残念ながら萎みつつある。それでも、廃プラスチックと紙屑からRPFを製造して、石炭代替利用することは既に定着している。また、廃食用油からのBDF製造による軽油混合利用や、木質バイオマスからのバイオエタノール製造によるガソリン混合利用も実用化されているが、それぞれ5%・3%と混合割合が制限されており、税制上の課題もある。結果、コスト面の課題解決が困難で、地産地消のエネルギー利用やリサイクル率向上等の観点での導入が先行している。さらに、古着からのバイオエタノール製造等実験的な事例まで含め、その注目度は高い。
サーマルリサイクルの一形態である燃料製造の強みは、燃焼時のエネルギー効率向上と、保管が可能であることの2点となる。昨今では、バイオマス利活用への期待も高まりその推進が期待されている。本稿では、リサイクルによる燃料製造の最前線にある事例二つを取り上げて、その検証を行う。
まず、古くて新しいテーマが「廃プラスチックの油化」である。かつて年間約1万5千トンのプラスチック製容器包装受入能力を持つ油化施設が経営破綻した経緯もあり、技術としての評価は一時失墜した。昨今になって、小規模電気釜や触媒の活用等による実証成果が生まれており、その可能性が見直されつつある。多種多様な廃プラスチックの液体燃料への再生は、直感的に極めてわかりやすい。
油化で抽出した混合油は軽油や重油、ガソリンへの精製も可能だが、その歩留まりは低い。また、塩素分やテレフタル酸等油化出来ない成分への対応も必要であり、事業化に向けた課題は未だ残されている。それでも、加工プロセスのエネルギー投入量は限定的であり、中間処理プロセスの低炭素化という観点からも期待度は大きい。
次に「中間処理に伴う水素製造」である。トヨタ自動車のミライ上市以来、「水素社会」は錦の御旗とも言えるキーワードとなった。リサイクラー目線では、メタン発酵施設とガス化溶融炉でのプロセス生産がその手法となり得る。まず、食品残渣や下水汚泥等を発酵させて精製したメタンから、水素を抽出することが出来る。ただし、仮に水素を燃焼して発電することが目的であれば、メタンのまま燃焼させる方がエネルギー効率も高い上、保管時の取り扱いも容易である。したがってメタンからの水素抽出には合理性が認められない。
次にガス化溶融炉の副生ガスからの水素抽出である。こちらも技術的には可能だが、既に副生ガスからのエネルギー回収は行われており、現時点では積極的なメリットが見出せない。高炉で発生する製鉄副生ガスのように、夜間電力での電気分解等が前提でなければ必然性はない。中間処理時のプロセス生産での水素製造の意義は疑わしいとの結論になる。
いずれにせよ、燃料製造が可能となれば、リサイクルのイメージ向上と市民理解醸成には大きく貢献することになる。有効なターゲットの見極めを前提に、既存の取組も含めた「あと一歩の技術開発」にこそ期待したい。