「ソーティングセンター」が示唆する発想の転換 一括収集と大規模機械選別の組み合わせ

メディア掲載

「分ければ資源、混ぜればごみ」という市民向けの標語は、一面の真実を含んでいるが不正確である。質の高いリサイクル原料を確保するには排出源の分別が有効なのは間違いないし、一度混ぜてから特定の素材を抽出するには手間もコストもかかる。ただし、廃棄物の選別技術は急速に進化しており、人手に頼らず機械が選別出来る範囲は拡大している。

分別排出の弱点は分別収集に伴う負担に尽きる。素材区分毎に収集を行えば、収集コストは上昇し、輸送効率が下がり、車両由来の温室効果ガス発生量は増大する。仮にその分のコストや環境負荷とのトレードオフの範囲で、一括収集後に施設で資源化を行えるなら、発生源で分別を行う必要はなくなる。この発想転換を具現化する施設こそが、ソーティングセンターなのである。

既にその実績を積み重ねているのが欧州諸国である。リサイクルメジャーと呼ばれるフランスのVeolia EnvironmentやドイツのREMONDIS等最大手は、大規模ソーティングセンター導入と合わせて急速に売上規模を拡大している。バリスティックセパレータや風力選別機、光学選別機等の先進設備を大量導入して人件費を削減しつつ、処理後の原燃料の売価を高めることで、十分な事業性を確保している。無論、制度的な裏付けもある。EUの改正廃棄物枠組み指令では、原則として家庭ごみ全てに対するリサイクル義務が課され、リサイクル手法の優先順位も定められた。焼却・埋立処分に廻す残渣を極小化しつつ、リサイクル率を最大化する手段として、ソーティングセンター導入が最も経済性に叶う選択肢だったのである。

ではその欠点はと言えば、リサイクル後の原燃料の品質にある。同じEU指令では、「廃棄物の終わり」という概念が定められ、品目毎に定められた一定の基準を満たす素材は自由に市場で取引される。結果、安易なカスケードリサイクルが合理的と判断されるリスクもある。

欧州でのソーティングセンターの普及は我が国のリサイクル市場に何を示唆しているのか。まず、自治体に処理責務のある一般廃棄物をそのまま民間施設に処理委託することのハードルが高い。欧州では拡大生産者責任導入をテコに民間参入が本格化したが、我が国でその範囲は限定的である。また、大規模設備投資を支える規模のメリット確保には年間最低10万トンの処理が必要と言われており、小規模自治体では広域処理も必須となる。更に、「廃棄物の終わり」という概念が、我が国には馴染まない。水平リサイクルを最上に位置付け、エネルギーリカバリーを極力回避して、処理後の原燃料の品質を高めてきた技術やこだわりは国民性にまで根づいている。基準を決めて満たせば完了、というドライな考え方は、リサイクラーのみならず、排出事業者にも受け入れられにくい土壌がある。

こうした中、実証レベルの取り組みが始まっているのがプラスチック製容器包装である。制度の枠組みを超えた混合収集とソーティングセンターの組み合わせの有効性も検証されつつある。小さな一歩ではあるが、従来の緻密過ぎる仕組みに風穴を開けるきっかけにはなり得るかもしれない。

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