今が旬のマーケットと言えば、FIT活用による食品メタン発酵、普及期にある小型家電リサイクル、建設需要拡大を見据えた汚染土壌リサイクル等が挙げられる。いずれもマーケットが拡大しており、戦略的な広がりも期待できる分野として、全国で真剣勝負が繰り広げられている。それぞれ制度の裏付けはあるが、リサイクラーが描くビジネスモデルの自由度は高い。当面は利益よりもシェア確保を優先する傾向も見られるが、いずれマーケットが安定してその主役の顔ぶれが出揃うことになる。伝統的な廃棄物処理の枠内で価格競争を挑むより、はるかにその投資効果は高い。
問題はその先である。例えば5年後に大きく立ちあがるマーケットはどこにあるのか、確実な答えなどない。そこに求められるのはビジョンであり、業界が抱える課題や進化の方向性を見極めつつ足場を固めることで、先行者利益を得ることができる。例えば、エネルギー特別会計の拡大を見据えれば、リサイクルの低炭素化は追求すべきテーマになるかもしれない。また、急速な自動選別技術の発展に目を付けるなら、制度的枠組みを超えたソーティングセンター整備という方向性もある。まだ成功事例が限られている海外展開についても、途上国の経済発展や環境意識の高まりを経て、いつかはマーケットが確立するはずである。
こうしたテーマに挑む上で、一定の不確実性を避けて通ることはできない。だからこそ、行政が掲げる政策を見極めつつ、補助金等による後押しを求めることも有効な手段となる。自社のビジョンと政策が一致するなら、未来への投資に踏み切るきっかけとすべきである。
ではそのさらに先に広がる世界に向けては何をすべきか。リサイクルに限らず、今や10年後の世界に向けたシナリオを明確に描くことは不可能であり、積極投資はビジネスではなくギャンブルとなる。ただし、誰も何もしなければ、新たなマーケットが生まれない。少なくとも業界を牽引する意欲と実力を有するリサイクラーは、投資コストを最小化しつつも、未来を創るためのアクションを起こしていく必要がある。
現時点でも10~20年後のマーケットがイメージできる分野として、炭素繊維リサイクル、太陽光パネル等次世代製品リサイクル、レアメタル回収等が挙げられる。当面は誰も儲からないことが共通項であり、抜け駆けには何のメリットもない。こうした分野では、業界内での研究会の創設、業態を超えたコンソーシアム形成、行政や研究機関との連携による技術開発等のアプローチが有効と考えられる。
リサイクルビジネスにも、未来を創るビジョンと投資が求められている。次回から、その具体例を一つひとつ検証してみたい。