「地域循環共生圏」と聞いて、ごみの分別やリサイクルを連想する人は多いのではないだろうか。
地域循環から資源循環を想像し、資源循環からリサイクル、そしてごみの分別が頭に浮かぶのだ。
ごみの分別や中間処理・リサイクルの方法は自治体によって実にさまざまである。分別をほとんどしなくてもよい自治体があれば、30種以上の分別項目を設定している自治体もある。
ごみの分別方法が異なっている理由は、法律により一般廃棄物の処理責任が自治体にあり、各自治体が地域の実情に応じて適切なごみ処理を実施しているためである。ここでいう地域の実情とは、域内の産業構造やデモグラフィーに他ならない。
本稿では、自治体のごみ減量、リサイクル推進に向けた、「子育て世代」「高齢者」「観光客」への対応と今後のサービス提供について検討を行なう。
まず、子育て世代と高齢者が居住する世帯から排出される共通のごみとして「紙おむつ」が挙げられる。少子化によって乳幼児用の紙おむつは減少傾向にあるが、高齢者用の需要が伸びており、今後の超高齢社会ではその傾向がさらに加速する見込みとなっている。また、紙おむつは焼却ごみの5~10%程度を占めており、各自治体で減量、リサイクル方法が検討されている。こうした中、福岡県大木町や鹿児島県志布志市など、一部の自治体では、紙おむつのリサイクル(サーマルを含む)に取り組んでいる。
紙おむつのリサイクル推進は、地元自治会や民間の処理会社、メーカーなどが連携して実施されている。昨年はこの成果として、メーカーから使用済み紙おむつを原材料とした紙おむつリサイクル技術の完成についてプレスリリースされたところである。
また、子育て支援として、子育て世帯に紙おむつ用のごみ袋を無料配付している自治体もある。高齢者を対象としたサービスとしては、地域包括ケアシステムの一環としてごみ出し支援と見守りを一体化した「ふれあい収集」が行なわれているケースもある。
一方、観光客を対象としたサービスとしては、北九州市や京都市が実施している環境修学旅行が挙げられる。旅行業者や処理施設等と連携し、地域のリサイクル施設や再生可能エネルギー施設を見学してリサイクルや省エネについて学ぶとともに観光振興を図ることが狙いとなっている。さらに、例えば奈良市では「奈良市おもてなしエコ活動実証事業」として、地域の商店や公共施設等が観光客のごみを引取る実証実験が実施されており、ごみの散乱防止と中心市街地活性化に向けた取り組みも推進中である。
このように、各自治体での取り組みは、単にごみ減量とリサイクル推進のみを目的とした施策ではなく、高齢者対策、子育て支援、観光振興、教育、中心市街地活性化など、関連施策と連動して複合的に実施されていることがわかる。
自治体の縦割り構造は周知の事実だが、先進事例をみれば、部門間協力が不可欠であることは自明である。また、自治体単独で取り組むのではなく、地域の住民や事業者、ノウハウを持っているメーカーや旅行業者など、多様な主体と相互連携することがさらなる付加価値を生み出すのである。
地域循環共生圏を支えるサービスの提供は、地域の実情を踏まえつつ、多様な主体と相互連携を図ることによって実現可能となるのである。
松岡 浩史