「ポケモンGO」の上市は、イノベーションに新たな方向性を示した。IT革命以来のサービスは家やオフィスに居たまま社会生活を送れるベクトルで急速に進化してきたが、この遊具は人々を自発的に外に導き、更には特定の場所に誘導する点が注目されている。
ただし、AR(拡張現実)を利用した遊具が爆発的に広まった前提には、今やマジョリティとも言えるスマートフォン(以下、「スマホ」という。)ユーザの存在がある。民間調査会社によれば、国内では70%超、途上国を含む主要国でも50%超の人々が既にGPS機能内蔵のスマホを保有している。すなわち、スマホ利用を前提としたビジネスの受入俎上は既に整備されていると言える。
本稿では、産廃マニフェスト管理を一例に取り上げて、リサイクルビジネスの現場におけるスマホ活用可能性を検証する。
ここではまず、スマホの用途を「入力」「記録」「通信」「アプリ搭載」の4つに分けて考える。操作性が高い入力端末としては、バーコード読み取り等を行うハンディターミナルやPCが代表例であった。スマホは手許での画像読込とキーボード入力の双方を可能としており、現場での読取や入力操作が求められる作業にも適用出来る。例えばマニフェスト伝票への記入や受け渡し等を代替することは容易に実現可能である。
次に記録機能である。スマホには「ユーザID」と呼ばれる契約者固有識別子や端末固有識別子が振られているため、読み取られた情報や画像等がどこに流通しても、どの端末で記録されたのかが一意に特定できる。更にGPS機能で端末所在が特定されれば、少なくともルート管理上の不正行為等は完全に把握(防止)することが可能となる。
三つ目に通信機能である。ハンディターミナルやPCはLANケーブルとルータの利用による有線接続による通信が一般的であった。一方、スマホで通信可能な4G等高速通信規格の電波は、今や世界中に張り巡らされており、電源さえ確保出来れば、ほぼリアルタイムに記録済み情報をインターネット経由でどこにでも送信することが可能となっている。
最後に、「アプリ搭載」機能である。「ポケモンGO」を例に挙げるまでもなく、スマホへのアプリダウンロードは、操作説明が不要な程容易である。マニフェスト管理の場合もユーザ側にアプリの名称さえ伝えれば、各自が保有する端末がそのまま専用端末として利用可能となり、操作性や動作環境を理由に導入を断念する必要がなくなる。
産廃マニフェストの電子化率は44%を超えたが、極端に言えば今はその情報全てがコンプライアンス管理の手段に過ぎない。仮に100%に近い電子化が実現出来れば、ビックデータとして収運・処理の効率化等を見据えた前向きな利用価値も生まれる。スマホの普及がその後押しとなることを期待したい。
以上の機能を個別に検証すれば、業界内で産廃マニフェスト以外にもスマホの多様な利用場面が見出せるはずである。最強の通信端末を活かせるか否かは、現場目線の創造力の有無で決まる。