海亀の鼻にストローが刺さった衝撃的な映像の拡散以来、廃プラスチック(以下、「廃プラ」)への海洋流出への問題意識が世界的に高まっている。さらに、従来は最大の受入国として手選別を前提としたマテリアルリサイクルを担ってきた中国は、人件費の高騰及び環境保全の観点より、一昨年末から本格的な廃プラ輸入規制を行うに至った。結果、ほぼ全ての先進国では、廃プラの需給バランスが崩れ、行き場を失ったベール品等がストックヤードで山積みになる事態が生じている。
こうした中、我が国では昨年10月から「プラスチックスマート」キャンペーンを開始しつつ、国を挙げた廃プラ3Rを推進している。今年度G20議長国として、「廃プラスチックリサイクル戦略」に則って、日本モデルとして我が国の技術・イノベーション、環境インフラを世界全体に広げるとの方針を示した。地球規模の課題を内政的な取り組みに留めることなく、海外市場獲得のきっかけとする視点には大いに期待したい。本稿では、こうした背景を踏まえた「海外展開」の新アプローチの検証を行う。
まず、事実関係の把握と共有こそが課題解決に向けた第一歩となる。2010年実績で海洋プラスチックの流出量推計値上位4国は中国、インドネシア、フィリピン、ベトナムの東・東南アジア諸国(日本は30位)である。今も我が国が誇るべき成果として、例えばプラスチック製容器包装の場合、15年度実績で対04年度対比15.1%減のリデュース、45.3%のリサイクル率達成をもたらした。これは官民連携を前提とした制度設計に加え、その円滑な運用を担う技術開発の成果であり、発生源から再資源化までのサプライチェーンを通じた環境技術はすでに世界に誇れる水準にある。制度と技術のパッケージ展開に向けた体制は整っており、例えばPETボトルの水平リサイクル等商用化された技術は積極的な海外移転を目指すべきと言えよう。
次に、焼却技術である。世界最大の焼却大国である我が国でもマクロ的に見た産廃受入れが限界近くに至っているが、大規模ソーティングの後に輸出先でマテリアルリサイクルするシステムに依存してきた欧州では、廃プラ問題解決の糸口さえ見えていない。「2030年までに、すべての種類の埋め立て廃棄量を最大10%削減」などの目標も掲げているが、焼却発電等の導入無しにその実現性は疑わしい。広域収集体制が確立した欧州等でのエネルギー回収システム確立は、現実解としての理解が急速に進むことが期待されるため、そのPRも積極的に行うべきと考えられる。
最後に国際協調を前提とした技術開発である。廃棄物処理施設は社会インフラであり、他国の技術を一方的に受入れることには抵抗感を持つ国民が多い。また、ごみ組成を含め文化的な要素も一律の技術適用には馴染まないことを考えると、技術開発の段階から地元企業等との連携を図ることが理想的でありモノ売りの先を見据えたアプローチにもなり得る。
国内リサイクルビジネスが限られた国内市場の奪い合いに留まらず、海外市場獲得を目指すことの必然性とその実現性は、徐々に高まっている。