リサイクルビジネスは労働集約型産業であり、雇用創出を通じて地方の活性化等に寄与してきた。特に仕分け・分解・選別のプロセスでは熟練作業員の目利き力と木目細かな手作業が、いかなる機械をも上回る精度を実現している。ただし、少子高齢化を背景に国内で工場勤務する就労者数は確実に減少する。中でも、3K職場とも呼ばれる中間処理施設で今後も継続的に作業員を確保し続けることは至難である。
資源循環を担うリサイクル施設の役割が縮小することは考えられず、選別精度低下が受け入れられるはずもない。だからこそ、人間並み以上の処理が可能なロボット技術導入により、省人化・無人化を見据えた取り組みに挑む必要があるのだ。
本稿では、リサイクル施設におけるロボット技術の導入可能性や課題等についての検証を行う。
高度なロボット技術導入が最も有効なのは、既述の仕分け・分解・選別の工程である。仕分けとは、搬入した使用済み製品の種別や型番等を把握して、回収対象とする素材の含有量等を勘案しつつ、最適な処理ラインに流し込む作業を指す。具体的には、製品の個体識別に必要な情報を、あらかじめ整備したデータベースを廃製品側のバーコードやセンサー端末と突合して判断する。あるいは画像解析等を通じて、当該製品の外形等から判断して、処理ライン選定を行う手法もあり得る。
次に分解について、製品をつなぎ合わせるネジやビス等の位置を把握して、特定の場所や角度にエアドライバー等を突き刺した上で、部品や素材別等に分離する必要がある。この際も製品の個体識別は必須であり、データベース活用、画像解析またはその組み合わせにより、製品毎に最適な分解手法を選択する必要がある。
最後に選別は、例えばベルトコンベア上を流れる解体済み部品や素材を探知して、ロボットアーム等で濃度の高い破砕前原料に分類する作業のことである。現在も光学選別や磁力選鉱により自動選別が行われているが、手選別並の精度を実現するためには「手」に該当する機器で、「目」に該当する画像認識を前提に作業を行う必要がある。
仕分け・分解・選別後の部品や素材は、現在も機械主導の破砕工程に投入される。したがって理論的には、機械操作やトラブル対応を担う人材以外の人手が完全に不用になることも可能なのだ。
現時点で、リサイクル分野に特化したロボット技術は確立されていない。一定のトライ&エラーを通じて就労者数減少を補う期間のうちに実用化してゆけば良い。リサイクルの場合、自動運転のように人命に直結したり、製造ラインのように品質保証が問われたりするリスクは小さい。いきなり百点を目指すのではなく、50点から徐々に点数を高めていけば良いのだ。
単位当たり付加価値が低い業界は、一見して先端技術との親和性が低いようにも見える。ただし、その必然性と着手ハードルの低さを考えれば、リサイクルビジネスにもチャンスはある。まずは他産業に先行して、技術開発フィールドを提供する覚悟と意気込みに期待したい。