アジア地域のインフラ整備に必要な資金は今後毎年95兆円規模と言われており、AIIBはその資金需要を満たすために創設されるとのことである。個人的には、各国企業が長年辛酸を舐めてきた中国を中心に、「迅速」な融資を行う機関を信用する気持ちにはなれない。一方、国が借入金の受け皿となり、国際金融機関が主導して発注仕様書を作成するスキーム自体は望ましい。自治体や現地企業との調整では、技術ニーズに応じた技術提案を具体化した後に、「ない袖は振れない」との結論に至るケースが多いためである。現地政府が融資審査を受ける段階から連携を図ることが出来れば、結果入札とはなっても、「受注したけどお金がない」という事態に陥ることはない。
世界的にアジア諸国のインフラ投資への期待が高まっている現状を踏まえつつ、成功事例が少ないリサイクル分野の海外展開について再考してみたい。
インフラ投資に必要な「人」「モノ」「金」には、それぞれが異なる意味合いがあり、そのバランスに応じてリサイクラーのビジネスモデルが決まる。まず、「人」の投資とは焼却や破砕等に係る技術や経験を保有する人材の現地指導等を指しており、その対価として得られるのはコンサルティングフィーである。リサイクル技術がほぼ全て人材に依存することを鑑みると、現地ニーズは高くて然るべきだ。それでも特に途上国では、目に見えない稼働やノウハウに対価を払うことへの抵抗感が強く、無料でのサービス提供を期待されるリスクが大きい。個別人材の引き抜きは別として、企業としての海外展開は「人」だけでは成立しない。
そこで「モノ」とのセットで現地施設整備までを一貫して請け負えばEPC(設計・調達・建設)となる。目に見える施設建造への対価を求めることには、国内外問わず理解を得やすい。焼却炉整備等、我が国企業が実績を積み重ねているのは概ねこのモデルに限られる。EPC提案に際して必ず直面する課題は、現地ニーズと現地機関の支払能力のギャップである。
だからこそ、「人」「モノ」に加えて「金」まで含めたパッケージでの現地投資を行い、現地経営にまで参画するのがインフラ輸出である。現地政府やパートナー企業と共に最適な連携体制を固めて、インフラ提供に伴う安定収益を求める投資形態は、投資側にとっては理想的と言える。ただし、先進国からのインフラ輸出を現地政府や国民の視点から見れば、「21世紀型の植民地支配」に映る可能性もある。消費財とは異なり、空港や高速鉄道と同様、廃棄物処理・リサイクル施設は生活や産業の基盤であり、その利用料や税金を外国企業が長期的に収益化することを望む国民はいない。
国際金融機関による融資拡大は、現地インフラニーズと支払能力のギャップを埋める。リサイクルを含むインフラ投資に係る、その他の課題は変わらない。
敢えて結論を述べるなら、当面の現実解はEPCモデルであり、リサイクラーもその現実を念頭に情報収集や人脈形成を目指すべきと考えられる。